手術後1日目〜地獄〜

■【治療・病状】
[食事]
・朝食⇒ 5%
・昼食⇒ 0%
・夕食⇒30%
・ガスOK
[症状]
・身体のかゆみ
・吐き気
・腹痛(激痛)
・傷口の痛み
・膣からの出血
・発声がうまくできない(気管に麻酔が挿入されていたため)
[治療]
・鎮痛剤投与
・心電図
・空気圧マッサージ機
・痛み止め(座薬)
・エコー診察
・背中の鎮痛剤を抜く
・消毒
・お手洗いまで歩行
・尿管を抜く
・痛み止め(ロキソニン)投与

■【詳細】
文章に起こすのもはばかられるくらい、地獄の1日だった…。
術後ずっと背中から鎮痛剤を投与しており、ものすごく気持ちよかった。(麻薬みたいなものなのだろうか)
足の空気圧マッサージも気持ちよくて、ずっとこのままでいたい…という感じ。
ただ、肌が弱いせいか心電図のゴムと手術着のマジックテープで、胸・脇・背中が痒いのなんの、唯一自由がきく右手で掻いていた。
最初は15分おき、そのあと30分、そして1時間おきに心電図と血圧と体温を計るため、そのたびに起きる。観察室に時計はなく、いま何時なのか、いつまでこうしていればいいのか動けないまま解らず、痒みも増していき大変に辛かった。
痒みは我慢できたのだが、傷口の痛みが出てきて辛くなったので看護師さんに伝えた。発声がうまくできず、やっとの思いで伝えると、鎮痛剤の量を増やしてくれた。しばらくは楽になるが、今度は気持ち悪くなる。
「手術後のため強い鎮痛剤を使っているので、量を増やすと気持ち悪くなる」とのこと。「気持ち悪いのと痛いのとどっちが強いですか」と聞かれ、どちらも強いので答えられないでいると「どっちもツラいですよね」と理解してくださったが、それに対してどう対処するとかの話はなかった。
今から思えば、我慢するしかなかったのだろうと思う。
途中から担当の看護師さんが交代し、交代したかたはとても丁寧なかたで、心電図、体温、血圧とひとつひとつゆっくりこなし、身体をよく診てくれ、痒みにも気づいてくださった。
痒みどめの薬を塗ってくれ、胸のうえでゴチャゴチャになった配線もひとつひとつほぐして余計なものは外してくれた。そのことでだいぶ楽になった。
大袈裟かもしれないけど弱りきっている自分にとっては、本当に天使かと思った…。
同室の観察室にいらしたかたがひっきりなしにナースコールをするかたで、朝方「バイタルチェックがこない」と何度もコールしていた。そのたびに別の看護師さんがきて「○○さん(←観察室の担当看護師さんの名前)は、ひとりひとりゆっくり丁寧に診るかただからね、まだ時間がかかりますけど周ってきますよ」と説明していた。
そんなやりとりから、やはり丁寧な看護師さんだったのだ、良かったなあと思った。
ガスは普通に出たので、順調に治癒に向かっているのかなと前向きに思った。
やっと病室が明るくなり、朝食の時間になった。記憶が定かではないが、いる確かこのときに酸素マスクをはずしてくれたと思う。
この辺から地獄が始まる。
身体を起こされ、3分粥とすりつぶしたおかずが出た。食欲はあり食べたいのだが、身体を縦にしたとたん、ものすごい吐き気に襲われた。
座っているのに眩暈もすごくて、とても食べられる状態ではなく、しばらく目を閉じていた。
すこし落ち着いてから、ひとくちずつ3分粥を食べるが、とにかく吐き気がすごい。途中で「オエッ」となってしまい食べられなくなり、泣く泣く食事終了。
看護師さんに気持ち悪いと伝えると「背中の鎮痛剤は、吐き気の副作用があるので、外れたら吐き気も良くなりますよ。今は吐き気止めの点滴をしましょう」とのこと。
身体を横にして休んでいると、今度はものすごい腹痛。お腹の中がひっくりかえるように痛む。腸がムキ出しになってねじれているような感じ…。文字通りのたうちまわって、看護師さんを呼んだ。
看護師さんの説明によると「痛み止めの点滴をすることはできるが、それをしてしまうと副作用で眠くなってしまう。午後からは立って歩くことが今日の目標なので、痛み止めではなく座薬で様子を見ましょう。立って歩けるようになれば、口から痛み止めの抗生物質も投与できますから」とのこと。
こんな状態で午後から立って歩けるのかな?とにわかには信じがたかった。
座薬を入れるが、痛みはまったく治まらず、むしろ増していく。看護師さんにお腹を触られたら、ムキ出しの腸を爪でとがれたような痛みで“ぎゅるん”と腸がねじれる感じ。脂汗は浮いてくるし時間が経つうちに激痛で体力も消耗し限界だと思った。
昼食ももちろんひと口食べただけで、手がつけられなかった。
座薬を入れてから3時間半が経過しても、ちっとも良くならないのでさすがに看護師さんたちも心配してくれ、回診かなにかで病棟にいらしていた女医さんを呼んでくれた。「座薬が効かないなら(痛んでいるところは)傷口ではなく、お腹のなかなんじゃないか」と話していた。
確かに、お腹のなかに異変が起こっていたとしてもおかしくないと思えるような痛み…また手術なんてことになったら、と思うとぞっとした。
女医さんが診てくれたが、触ろうとしてくれた瞬間、さっき看護師さんに触られたときの激痛がフラッシュバックし、本能なのか先生の手を押さえてしまった。いつもの自分だったらありえない行動…。先生に「これは診察に必要なことですから」と言われハッとする。
しかし触られると、また腸を直接爪で引っかかれたような痛みで“ぎゅるん、ぎゅるん”となる。ものすごい表情をしていたんじゃないだろうか。
先生がエコーで診察してくれ「痛み止めの点滴は入れたくないんだけど、入れますね。ただ、麻薬の次くらいに強い薬だから、色んなこと(症状)を見逃すしあまりやりたくないんだけど…」というようなことをおっしゃった(この辺は痛みで記憶が曖昧)
その後、しばらくしてから看護師さんが痛み止めの点滴を持ってきてくださったが、ほんの少し痛みが和らいできたのでそれを伝えると「やはり、やらないにこしたことはないから、もう少し様子を見ましょう」ということになった。
時間の経過とともに少しずつ痛みがおさまってきて、看護師さんが背中の鎮痛剤を抜いてくれた。
確かに鎮痛剤が切れてから吐き気は治まってきていた。
それから看護師さんが感染症予防で局部を消毒してくれたが、お腹をさわられないかビクビクしっぱなしだった。あまりにビクビクするので「腹帯はご自分で巻いてもらったほうがいいですよね?」と言われてしまった。いや、信用していないわけじゃないんですけどね、とにかくあの痛みがフラッシュバックして…と言いたかったが、相変わらずちゃんと声が出ない。
消毒していただき、ややスッキリしたところで、立ち上がりお手洗いまで歩行することになった。看護師さんの指示に従ってベッドから降りる。
ここで主人のお母さんが来てくれて、思わず泣きそうになるが、歩行を応援してくださり何とか歩かねばと、ゆっくり歩く。
立ってみるとお腹には、今にも爆発しそうな鉛でも抱えているような鈍い痛みがあった。
お手洗いまで辿り着くと、看護師さんが尿管を抜いてくれた。尿官を抜くのは痛そうだと思っていたが、全く痛みはなかった。
少しずつ色んなものが外されて気分的には身軽になっていく。
この時初めて傷口を見てみたら、フランケンシュタインのようになっていた。10センチメートルへど縦に真っ直ぐ切られていて、ホチキスの針で横にバシバシ留められていた。見るからに痛々しい。
「立ってお手洗いまで歩く」という本日の目標が達成されたので、病室に戻れることになった。
お母さんに泣きながら今までの痛みについて話してしまった。
お母さんによると、先生が腸など他の臓器も触って診てくれたと言ってたけど、他のかたから聞いた話では、臓器を丁寧に元の位置に戻すのではなく、パッパッと詰めて閉じるらしいとのこと。術後は臓器が元の位置に戻ろうとして痛む、ということらしい。
それを聞いて、あの痛みはそれだったのかと、合点がいった。
お母さんに昨日の先生の手術結果説明をもう1度教えていただいた。その後、発声もしにくいし、痛みや辛さを察してくれ、早めに切り上げてくださった。なんともありがたい。しかしお母さんの顔が見れてホッとして、痛みも和らいだ感じがする。
腹痛がラクになってきたと思ったら、今度は胃痛がやってきた。
ただ、普段から空腹時に感じる胃痛と同じだったので、これは単に胃が空っぽにっているから痛んでいるだけなんだろうなと思った。
看護師さんに、胃薬をいただけないかと相談したところ「痛み止めと胃薬はセットなので、痛み止めと一緒に出ますよ、今持ってきましょうか?」とのこと。すぐに持ってきてくださった。
さっそく抗生物質の痛み止め(ロキソニン)、セットで胃薬(ムコスタ)を投与。
夕方、母がきてくれるが、申し訳ないことに日中の激痛疲れでグッタリしてしまい寝てしまった。
夕飯はまだ3割くらいしか食べられなかった。美味しそうな匂いがしてるのに…残すのがもったいなかった。
その後、主人がきてくれて、主人の上司からの差し入れで『きょうの猫村さん』という面白そうなマンガをいただいた。
文庫で軽いし、読みやすそうで、しかも私の好きな『ユキポンのお仕事』のようなまったり感…とっても嬉しかった。何でもインターネットで1日1コマ更新しているとのこと。主人が「(上司は)何でも知っていてすごいなあ」と尊敬していた。「治ってから御礼をしよう」と話し合った。
主人の顔を見て安心した。主人も辛さを察してくれ、早めに切り上げてくれた。
本当に家族のありがたみを感じ、この家に嫁いできて良かった…と思った。